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もえさが解決録
縁結びや縁切りにまつわる伝説をご紹介する連載です。どのような言い伝えにより、そこが縁結びや縁切りにご利益がある場所になったのか、その背景を探ってみましょう。
鉄輪(かなわ)と聞いて、ピンとくる人は少ないかもしれません。鉄輪とは、鉄の輪に三本の足をつけたもので、囲炉裏の火の上に立てて、鍋やヤカンなどの台にするものです。 しかし、別の用途で使用されることもありました。それが丑の刻参りです。
丑の刻参りは、逆さに被った鉄輪に蝋燭を立て、白装束に身を包み、顔に厚く白い粉を塗り紅を差し、一本歯の下駄を履き、胸に鏡を下げ、腰には守り刀を持ち、口に櫛を加えた姿で、丑の刻(午前1時~午前3時ごろ)に、神社の御神木に相手の身代わりに見立てた藁人形を五寸釘で打ち込む呪術。人に見られてしまうと、自らにその呪いが跳ね返ってくるので、人知れず行なわなければならないというものです。
ある女が夫に捨てられてしまいます。自分を捨て、後妻を娶った夫を怨んだ女は、貴船神社に、自分の夫を呪い殺すために丑の刻参りを発願するのです。 毎夜、草木も眠る丑三つ時に、女は夫に見立てた人形を、貴船神社の御神木に打ちつけました。その時の形相は、まるで鬼のようだったと伝えられています。
女が丑の刻を始めてからというもの、夫は悪夢に苦しめられることになるのです。夫は陰陽師の安倍清明に祈祷を受けることにしたのです。安倍清明といえば、平安時代を代表する陰陽師。その力は強力なもの。祈祷をはじめると、鬼となった女が現れるのですが、すぐに苦しみながら去って行くのです。
丑の刻参りは、七日間、誰にも見られずに続けることで満願するといわれています。満願を目前にした六日目、女は安倍清明の祈祷により、井戸のほとりで力尽き、そして息絶えてしまうのです。一説には、自ら身投げした井戸とも伝えられています。 女を哀れに思った付近の人たちが、この鉄輪で塚を築いたそうです。
このような伝説により、いつしか鉄輪の井戸は、縁切りの井戸として知られることになります。井戸の水を汲み相手に飲ませると、悪縁が切れるというのです。
現在では、井戸の水は枯れていますが、持参した水を鉄輪の井戸に一度供え、それを持ち帰っても、効力があるといいます。そのため、水が枯れた今でも、参拝者が尽きることはりません。
京都市下京区堺町松原下ル鍛冶屋町